もし、電気を貯めることができれば…。
水道やガスと違って、電気は貯めることができない! すべてはそこから始まっています。(もちろん蓄電池の話は大事なので後からします)
電気は発電所で作り、送電線を通して、各家庭や事業所に配られ、電気機器のスイッチを入れて使用し、私たちは使用量に応じて電気代を支払います。これが現在の電気の発電=送電=受電システムです。
しかし、ご存知のように私たちが電気を使っても使わなくても24時間、発電されています。そのため使用(需要)のピークに合わせて発電設備を用意(供給)しなければなりません。発電コストから考えると、できるだけ大量の電力を1箇所で作った方が安くなります。となると、発電設備は大型化することになります。
しかし、今回の震災で、原子力発電に限らず大型の発電設備だけに頼ることのデメリットが明らかになりました。一度の故障や停止で多大な影響が出てしまうのです。といって、中規模の発電設備をあちこちに作っては、送電のコントロールも難しくなりますし、ムダをバラまくことになりかねません。
電力の地産地消
ピークを抑えて、できるだけなだらかにすることを平準化といいます。電力需要・供給を平準化するには、ピーク時にエアコンの設定温度を上げる(冬場なら下げる)などの節電が一番簡単な方法ですが、これでは工場生産を制限し、産業に多大な影響が出るだけでなく、私たちの健やかな暮らしを犠牲にすることになります。この夏の突発的な停電を抑えようと、政府やマスコミは節電を強く訴えていますが、短期ならともかく、長期に節電を強いて、結果的に産業や社会生活を圧迫しては、あまり賢いやり方とは呼べないでしょう。
もちろん、湯水のように欲しいだけ電気を使うことは決して良いわけではありません。地球温暖化を防ぐ意味からも「節電」は今後も必要ですし、そのためにライフスタイルや産業のあり方の変化が求められているといえます。では、どうすればいいのでしょう。
需要を過度に圧迫するのではなく、供給側を工夫することがこれからの賢い、つまりスマートな平準化方法です。そのためには…、
1つ目は、小さな発電設備を使用場所の近くに持つこと。
2つ目は、電気を貯めること。
3つ目は、使っていない所から使っているところへ融通しあうことです。
1つ目の小さな発電設備を持つことは、大規模発電に頼らず、ムダの多い中規模発電に比べると、スマートな方法かも知れません。町や村など地域の電力補助にふさわしい風力発電や地熱発電や、工場単位や家単位の電力補助を担う(≒まかなう)太陽光発電など再生可能エネルギーがその代表格です。風力発電も小出力ですが小型のものも登場してきました。今後も発電効率の向上や設備のローコスト化が図られ、ますます重要なものとなるでしょう。また、大型のビルなどでは自家発電もさらに脚光を浴びると思われます。
他にも、これまで規模に比べて効率が悪いとされてきた〈バイオガス〉〈潮汐力〉〈マイクロ水力〉などさまざまな自然エネルギーを利用した発電方式も、家のそば、工場のそば、地域の中で発電し、その中で消費する…いわば電力の地産地消が可能です。
家庭で電気を貯める
小規模発電は“いま”の話ですが、2つ目の蓄電は明日にでも解決したい課題といえます。
昼間、太陽光発電で得た電力を蓄電池に貯め、夜間、家庭用の電力として使用できれば、電力会社からの受電は最小限にとどめることができるかもしれません。また、昼間電力に比べて安価な夜間電力を使って蓄電すれば、電力コスト全体が下がります。本紙でも取り上げましたが、蓄電量が多く、しかも蓄電時間の短いリチウムイオン電池SCiB(東芝製)が話題となりました。
またこれまで非常用・停電防止用電源(UPS)として使われていた蓄電池が、一般使用もできる蓄電池として再登場しています。
電気を貯める自動車
そのリチウムイオン蓄電池を大量に使っているのがEV(電気自動車)です。自動車を使用しない夜間に貯めた電力を使うことで、夏のピーク時の電力使用量を抑えることも可能です。
では実際にEVには、どれくらいの蓄電容量があるのでしょうか。航続距離200kmを謳う日産リーフを例にしてみますと、仕様表では24kWhですから、2.0kW/時クラスのエアコンなら約12時間は稼働できます。ただし、蓄電池は直流ですから直交変換のインバーターと、定電圧用の変換器が必要となります。(前述の日産リーフの場合、直流340V)。さらに、現在200VのEV用蓄電池←→家庭のコンセント間をスムーズに接続するコンセントも必要になります。
また、(株)東芝が本年6月にリチウムイオン電池システムを供給すると発表した三菱自動車のEV(i-MiEVなど)では、16kWhで直流330Vとなっています。
経済産業省と自動車業界は「自動車戦略検討会」を設け、EVに搭載された二次電池を将来的に電力不足の解消に活かそうと考え、検討を始めています。
電気を分け合う社会
三つ目は各戸、各ビル、各事業所と電力会社が、それぞれ情報をやりとりすることで、電力会社から一方的に電力を送るのではなく、使う側の状況を見ながら必要に応じて電力を供給する仕組みです。
これをスマート・グリッドと呼び、こうした地域をスマート・コミュニティと呼びます。
スマート・コミュニティには、3つのエネルギー・マネージメント・システムが必要だと考えられています。
● FEMS(ファシリティー・エネルギー・マネージメントシステム=工場などに対応)
● BEMS(ビル・エネルギー・マネージメントシステム=オフィスビルなどに対応)
● HEMS(ホーム・エネルギー・マネージメントシステム=家庭・集合住宅などに対応)※ヘムズと読みます。
その他にも、スマートコミュニティには、交通機関、上下水道などの社会インフラの電力供給・消費の監視・監理が必要とされています。
なかでも電気工事店様のビジネスに直結するHEMSでは、発電機器(太陽光発電システム、燃料電池)による発電量や売電量、さらに家庭内の各種電気機器の電力消費量を、家庭内情報システムであるフェミニティ(後述)により収集することができます。
スマート・コミュニティの構想はすでに横浜市で始まっています。低炭素都市の実現のため「次世代エネルギー・社会システム」の構築によるCO2 削減を目指すことをテーマに掲げ、「横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)」の名称で本年4月から参加者を募集しています。
近い将来には、家庭用二次電池、EV搭載二次電池などの蓄電装置が新たなエネルギー機器として家庭にも普及してくると予想されており、スマート・コミュニティにおいて電気工事店様の果たす役割は極めて大きいと考えられます。
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